新橋デリヘル嬢のある一日

「じゃあ、また明日ね」
大学での講義が終わり、喫茶店でお茶をするという友人達に別れを告げて、今日も私は電車に乗り込んだ。平日の午後3時になったばかりの山手線はサラリーマンの数も少なく、私もすんなりと座ることができた。
私の名前は朱里、大学二年生の現役女子大生。ちなみに理系。理系だから男が山ほどいて彼氏もすぐにできそうなものだけど、残念ながら草食系男子が一般化されてしまった現代では、飲み会の場に顔を出さない私なんかに声をかけてくれる男子はいない。個別で誘ってくれたらいくらでも飲みに行くのに、いつも忙しそうに学校を飛び出してしまう私に遠慮してなのか今日までの二年間一切飲みに誘われたことはない。
忙しそうにする私が悪いって声もあると思うけど、生活費や学費を稼がなければならないからどうしてもアルバイトをする必要があるの。だから今日もこうして大学を飛び出して新橋までやってきたのだけど、オシャレなパン屋とかカフェとかで働いているわけではなく、お金を第一に考えて風俗業界の新橋デリヘルで働いている。抵抗はもちろんあったし、辞めようと思ったことは何度もあった。それでも新橋のデリヘルを辞めなかったのは、これ以上に効率よく稼げるバイトを私は知らなかったからだ。実際に新橋のデリヘルは効率良く稼げたので、私にとって良いバイトに間違いはなかった。
いつものように新橋デリヘルの事務所に立ち寄り、待機所へと移動して携帯をいじっていると早速指名が入った。現時刻はもうすぐ3時半をまわろうかという時間だったので新橋のオフィスで働いているけど仕事は若い人に任せているお偉いさんだろうか、自営業やフリーターなど時間に余裕のある人だろうかなどと相手の姿を想像している内に、指定されたホテルに着いていた。私はいつも通り、営業スマイルを浮かべ部屋のドアをノックした。ここで私は大学生から新橋デリヘルの女の子へと変身するのだ。

「あれっ?朱音ちゃん?」

部屋のドアが開き、目の前に現れたのはさっきまで同じ大学で授業を受けていた男の子のS君で、実験班が同じになったこともあり普通に話せる間柄の人だった。S君はポーカーフェイスなのか平気そうな顔を浮かべていたが、私は新橋デリヘル嬢としての笑顔の仮面を張り付けたまま固まってしまっていた。

「とりあえず中に入ってよ」

私は新橋デリヘルでは今までないような固まった表情のまま中に入り、自然と離れるようにベッドと椅子にそれぞれが座り沈黙が空間を包んだ。S君は私に何と声をかけたらよいのかわからずに私を見たり天井を見たりと落ち着かない様子だった。私はこの状況をどう切り抜けられるか考えていたが、よい言い訳がすぐに思いつくはずがなかった。
こうして新橋のデリヘルで働き始めてから一番のピンチは、普段の何の変哲のない日常に突如やってきた。

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